弱いを「半分強い」に!

仮想通貨(ビットコイン)の経理&申告。個人事業主と会社(法人)の別に。

 
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田中まさき

仮想通貨の話しです。

会社(法人)の経理と税金の申告、
個人事業者の経理と税金の申告。

あまり深読みせず、ザザッと読んでいただければと思います。

 

山梨県中央市の税理士、田中です。
仮想通貨のブームが去りつつあります。
仮想通貨の申告の勉強、サボってもOKかなって思っちゃいますね…

タナカ

 

【法人編】会社(法人)がビットコインを持ったら

ますは法人編からまいりましょう。

 

含み損益の経理。会社はスル。

時価評価します。
ビットコインですと活発な市場がありますから、カンタンに時価を知ることができます。

(※ 活発な相場がナイ仮想通貨については、含み損益の経理は行いません。買ったときの円のままででOKです。)

どの時点の時価を拾ってくるかですが、市場が24時間やっていますから、

  • 決算日の最終の取引価格
  • 決算日の取引価格の平均の額

あたりを使えば大丈夫でしょう。

 

(株)タナカ は決算日において1BTC(100万円で取得)を持っていた。
決算日における取引価格は 1BTC=70万円 である。

決算日に次のような仕訳をきることになります。

(仮想通貨評価損)30万円 (仮想通貨勘定)30万円

翌期におきまして、↑この仕訳の逆仕訳はしません。

 

ところでこの「仮想通貨評価損」ですが、法人税の申告書では「損がなかったという調整」を行います。

 

法人税の確定申告

仮想通貨の「損した・得した」は、法人税の計算をする上では関係させちゃいけません。
評価損や評価益(いわゆる「含み損益」)は、法人税で言うところの「損金」「益金」というヤツにならないのです。

(「損金」は経費、「益金」は収入 みたいなもの。)

仮想通貨を円にかえたり、他の仮想通貨にかえたり、仮想通貨で買い物したり。
このときの「円と仮想通貨」の相場の動きから出てくる「損・得」は、法人税の計算をする上でも「損・得」として扱います。

しかしながら、仮想通貨を持っていることによって生じる「損・得」(いわゆる「含み損益」)は、法人税の計算に関係させてはイケナイのです。

という訳でして、経理と法人税のズレについては、法人税申告書の「別表四」というモノで調整を行います。
さらに「別表五」というモノにも記載が必要になってきます。

 

経理の時価評価、いる?

会計の本来の考えかたからすると「必要」と言えます。
でも法人税の計算をする上では、経理の評価損益はジャマなんですね。

経理で含み損益の仕訳をきらない
→法人税で調整しなくて済む

→法人税は正しく計算されますので、税務署的にはOKなのです。
(含み損益の経理は不要。)

 

銀行は別の見方をする

一方で、銀行はどうでしょうか。
融資を行う側の身(銀行)としては、「1BTCが200万円」なんて計算された貸借対照表は迷惑です。

実際はスゴイ損を抱えている会社じゃん!
ってなります。

ビットコインが時価で評価されていたら、
「お、この会社はしっかり決算書つくってるな」
と、好印象を持ってもらえるでしょうね。

 

「移動平均法」か「総平均法」か

法人税法には明確なキマリが記載されていません。

所得税法では原則「移動平均法」、
継続して計算することを条件に「総平均法」でもOK
ということになっています。
(平成29年の確定申告でご存知の方も多いでしょう。)

法人税でもこれに準じて、「移動平均法」か「総平均法」を使えばOKでございましょう。

 

【個人事業者編】個人がビットコインを持ったら

所得税の確定申告では、仮想通貨から生じるもうけは原則「雑所得」となっています。
(平成30年8月現在)

ただし、次のようなケースでは「事業所得」として取り扱ってOKです。

 

ビットコインが事業所得となる例

個人事業者(事業所得で確定申告する人)が、

  • 支払いにビットコイン(仮想通貨)を使う
  • 売上代金をビットコイン(仮想通貨)で回収する

のであれば、

  • 円をビットコインにかえた→ビットコインで支払った
  • ビットコインで売上金を回収→回収したビットコインを円にかえた

とき等に生じる「差益」「差損」は事業所得として取り扱ってOKです。

 

仮想通貨の売買でもうけを狙う→事業所得でOK?

「仮想通貨の売買でもうけますよ」
と開業届を出したら、事業所得にできるでしょうか?

正直わかりません。。
実体で判断する必要があるでしょう。
(税務署側は実体で判断するハズです。事業所得で申告できると納税者に有利なので。)

たとえば、次のような人なら、「仮想通貨の売買が本業=事業所得」と言えるかも知れません。

  • 本業が仮想通貨の売買である
  • 給与所得がナイ、もしくは給与所得がごくわずか

「仮想通貨の売買で得るもうけで生計を立てている」実体があるかどうか。
これがポイントとなるでしょう。

 

事業所得の経理

仮想通貨を事業所得で申告することになっても、含み損益の仕訳は切りません。
持っているビットコインの時価評価は行わないってことですね。

 

売上・仕入れ の経理

(1)売上・仕入れ があった時に「円」で仕訳を切るか。

(2)または、年末のタイミングで「円」の仕訳か。
・ビットコインで売上金回収→12月31日の「円」で売上の仕訳
・仕入れの仕訳をビットコイン(BTC単位)で切って、12月31日で「円」になおす

(1)ですと、総平均法の場合、年末に「仕入仕訳」を修正する必要が出そうです。
かと言って(2)では、年の途中で試算表が見づらいですね。。

おわりに(言い訳タイム)

仮想通貨に関しましては、まだまだ法律が追いついておりません。

ICOなんて国税庁からは全くナニも無し。
今年の1月にICOでご相談をいただいた際には、ちょっと冷や汗出ました。。
(もっとも安全と思われる方法で申告していただきました。)

「法人」「個人」の別で長々書きましたが、取り扱いが変わる可能性は十分あります。
(変わるでしょう。)
不明な点は原則に立ち返って書きましたが、それでも誤りが含まれている可能性もあります。

仮想通貨に明るい税理士でも分からない論点だらけ。
それが日本における仮想通貨をめぐる「税」です。

歯がゆいところではありますが、その辺りを汲んでいただいた上で、参考にしていただければ幸いに存じます。

 

参考文献

 

 

山梨県の税理士:田中雅樹(書いている人)

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