社長が入退院を繰り返す場合、役員報酬は減額すべき?

会社の社長や役員が、病気で入退院を繰り返すことがあります。
このとき、「あまり出社していないから報酬を減らしたほうがいいのでは?」と考える方も多いかもしれません。
税理士の田中です。
実は必ずしもそうではありません。
状況によっては、減額しないほうが良いケースもあります。
タナカ
なぜ減額しないほうがいい場合があるのか?
役員退職金の計算は、次のような式を使うのが一般的です。
最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率
もし病気を理由に役員報酬を減らしてしまうと、この「最終報酬月額」が下がり、将来の退職金額にも影響してしまいます。
ただし「高すぎる」と判断される可能性も
税務上、役員報酬が妥当かどうかは、次の要素を総合的に見て判断されます。
- 役員の職務の内容
- 会社の収益状況
- 従業員の給与水準
- 同業他社の役員報酬額
もし病気によって役員の職務内容が大きく変わっている場合、税務調査で「高すぎる」と指摘される可能性はあります。
実際に争われた事例
ここで、病気で入退院していた役員の報酬が争われた2つの事例をご紹介します。
事例1 国税不服審判所の裁決(平成14年6月13日)
- 対象役員:常勤取締役会長A
- 国税の主張:「Aは病気で入退院を繰り返しており、実質的に非常勤。報酬は半額が妥当」
- 判断:入院中も毎日のように経営報告や相談を受け、指示を出していた。出社もしており、業績も安定。同業他社と比べても過大ではないとして、報酬額を認めた。
事例2 大分地裁判決(平成21年2月26日)
- 対象役員:代表取締役B
- 国税の主張:「Bは入退院を繰り返し、前期と同様の職務はできなかった」
- 判断:病気療養を理由に減額したことはなく、報酬は業績を参考に決定。同業他社と比べても1割程度高いだけで過大ではないと判断。
ポイントまとめ
- 入退院を繰り返していても、一定の経営判断や指示を行っていれば「常勤」とみなされるケースがある。
- 報酬を減らすと将来の退職金にも影響する。
- 減額の要否は「職務内容の変化」や「同業他社との比較」など、状況次第で判断される。
まとめ
病気で入退院しているからといって、必ずしも役員報酬を減額する必要はありません。
実際の職務内容や会社の業績、他社との比較などを踏まえて慎重に判断すべきです。
税務上も、実態に即して妥当と認められる場合は、
報酬額を維持できる可能性があります。
減額する前に、専門家に相談しておくと安心です。
タナカ
税理士:田中雅樹(書いている人)
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