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【解説】奨学金返還支援制度とは?企業・従業員の税金・社会保険の扱いもチェック!

 
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田中まさき

「人手不足」と「奨学金返還」。
この2つの課題を一度に解決する策として注目されているのが、奨学金返還支援制度です。

こんにちは、税理士の田中です。
今回はこの制度の概要と、企業・従業員それぞれにおける税金・社会保険の取扱いについて解説します。

タナカ


■ 奨学金返還支援制度とは?

この制度は、企業が従業員に代わって奨学金を返還する仕組みです。
対象となるのは、日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を借りた経験のある従業員。
企業がこの制度を導入することで、

  • 採用時のアピールポイントになる
  • 若手社員の定着率アップが期待できる

といったメリットがあります。

▼ 制度の流れ(ざっくり)

  1. 企業が支援対象の従業員を決定
  2. 日本学生支援機構に申請
  3. 奨学金返還証明書に基づき、企業が支援額を決定
  4. 企業が直接機構に奨学金を返還(送金)

■ 課税関係はどうなる?(企業・従業員それぞれ)

✅ 企業側の取扱い

  • 奨学金返還額は給与として損金算入OK
  • 賃上げ促進税制の対象にも含まれる
     → 要件を満たせば法人税の税額控除も可能

✅ 従業員側の取扱い

  • 所得税は非課税(学資に充てる目的のため)
  • 社会保険料もかからない

日本年金機構の通知(令和5年6月)によれば、
「企業が直接返還する奨学金は、従業員の生活費ではない」
= 標準報酬月額には含めない → 社会保険料の対象外


■ 注意点!支援額の出し方と対象者に注意

この制度には魅力的な面が多い一方で、使い方を間違えると課税対象になるケースもあるので要注意です。

❌ 本来の給与を減らして奨学金に充てた場合

→ 給与と見なされ、所得税も社会保険料もかかります!

❌ 役員や従業員以外の人を支援した場合

→ たとえば役員本人従業員の家族は、 非課税の適用は受けられません。


■ まとめ:企業にも従業員にもメリットあり。でも運用は慎重に

視点 ポイント
制度概要 企業が従業員の奨学金を代わりに返す支援制度
企業側の扱い 損金算入OK。賃上げ促進税制の対象にもなり得る
従業員側の扱い 所得税・社会保険料ともに非課税・非対象(要件を満たす場合)
注意点 本来給与の代替や、役員・親族対象では非課税の適用なし

奨学金返還支援制度は、人材確保にも税務にも効果がある一方で、ちょっとした運用ミスで課税対象になってしまうおそれもあります。
導入を検討される企業の方は、ぜひ税務の専門家と一緒に制度設計していきましょう!

タナカ

税理士:田中雅樹(書いている人)

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